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エスカレーターにひかれて香港公園まいり
2012.05.15
金鐘

エスカレーターにひかれて香港公園まいり


次々と目の前にあらわれるエスカレーターに導かれて、偶然、香港公園にたどり着いたときの話を聞いてください。
1年に1度くらいは、ひとりで香港に降り立ち、滞在中の1日くらいは、なんの約束も予約も計画もなく、香港の裏道&表道散歩をするのを楽しみにしている。

その日は、中環(セントラル)から金鐘(アドミラルティ)に向かうあたりを歩きまわっていたのだが、ふと見上げると「JWマリオット」ホテル! その昔、ここに泊まったことを思い出す。
ローラ・アシュレイのような花束もようが美しいベッドカバーが、抱えて帰りたいほど好みであったこと。
眼下に見下ろすプールで、早朝から泳ぐ人たちを(疲れないのかしら?)と心配しながら眺めていたこと。
ホテルの横にあるショッピングモール「パシフィック・プレイス」で、「VIVIENNE TAM(ヴィヴィアン・タム)」の服を買ったこと。
まだ、いまほど香港の地理に明るくなくて、ツアー・コンダクターの後をついて歩いていたころだったので、場所をハッキリ覚えていなかったことなどを、芋づる式に思い出した。

ホテル周辺をひとまわりしてみようと、まずは、目の前で動いていたエスカレーターに歩を進める。

1本目のエスカレーターを降りると、また目の前にエスカレーターがあらわれた。2本目のエスカレーターを降りると、また目の前にエスカレーターがあらわれる。

横を見ると下りのエスカレーターも動いているので、降りてくるのも楽そうだし、とりあえず、「テッペンめざしてみよう!」と妙な気合いがはいる。

そうしてたどり着いたのが、期せずして香港公園! そこには、あふれかえるような緑の空気が待ち構えていて、息を吸うたびにフィトンチッドが胸の奥深くにまで流れこんでくる。

「“牛に引かれて善光寺参り”のようなものね」と、乗り継いできたエスカレーターを振り返って見下ろしながら思わずつぶやいていたが、このたとえは合っているのだろうか?

香港公園のなかには、亀の遊ぶ池、後ろにまわり込める滝、大掛かりな噴水。鳥が飛び交い、花が咲き乱れ、さまざまな樹木が太陽に向かって枝と葉っぱを広げている。とにかく気分の良くなる要素が、これでもかというくらい詰め込まれていた。

そして、発見しました、「楽茶軒茶藝館」! 香港公園のなかに、大人の憩うティールームがあるというウワサは本当だった。
さらにタイミングのいいことに、中国楽器の演奏を聴きながらお茶を飲める日だったので、さっそく店内に眺めのいい席を確保した。


やがて、5人の演奏者が登場する。
二胡(にこ)、琵琶、琴、笙(しょう)、尺八の合奏で幕が開いたのだが、尺八が、日本でおなじみのものより長い。1メートルくらいあったのではないだろうか。その長くて細い管の道を通ってくる音色は、すこし高めで、とても細やか。自分でも気がつかないうちに、目を閉じて、耳だけに神経を集中させていた。
この楽器の名前は、「洞簫(ドンシー)」というのだそうです。

あらっ! 原稿をここまで書いて、いま、思い出したのですが、「JWマリオット」の周辺を、エスカレーターで上下には移動して香港公園を楽しんだものの、ひとまわりしようという初めの思いつきは、かなり早い地点で忘れ去られていましたね。
気の向くまま、足の向くままの散歩につきものの柔軟性といえば聞こえがいいが、今回は、上へ上へ、空へ空へと伸びていくエスカレーターの“手まねき”に誘い込まれたような気がします。

足つぼマッサージ店で、「トン!」「トン!」の大合唱
2012.05.01
その他

足つぼマッサージ店で、「トン!」「トン!」の大合唱


香港らしいなぁ〜と思うもののひとつに、道路の幅いっぱいにビルから突き出している巨大な電飾看板がある。
屋根のない2階建てバスに乗って香港の街を疾走すると、(だいじょうぶ!絶対に、ぶつからない!)と頭では理解していても、横長の看板が近づくたびに亀のように首がすくんでしまう。
それと同時に、電球が切れたら、どうやって取りかえるのだろうか? お掃除はしているのだろうか? 素朴な疑問が湧きあがるが、作業中の姿を1度も見かけたことがない。

街中にあふれる看板のなかで、飛び抜けて多いのは食事どころに間違いないが、2番手は、ブランドショップだろうか?化粧品店だろうか? 漢方の薬局や、乾物をあきなう店の看板も多い。黄金をあつかう店も年々増えているように思うが、昔から多くて目立つのが、「足」の文字や、足形のマークがはいった「足つぼマッサージ」の専門店だ。

斜め上に顔をあげて360度ひとまわりすれば、かならず目に飛び込んでくる。
求める気持ちが、無数の看板のなかから、いま必要なものをピックアップしているのかもしれない。
街歩きに疲れて、ふくらはぎにハリを感じたときや、食べ過ぎの胃もたれをなんとかしたいときには、「足」の看板が3つも4つも目にはいってきて、どこに立ち寄ろうか迷うほどだ。

香港の人たちは、“未病”という状態に敏感だ。

体調を崩して病院にかけこむことにならないように、常日頃から、(この食材は、ノドがいがらっぽいときに効き目がある)(血液の流れを良くする)というように、体にいいとうたわれているジュースを飲んだり、亀ゼリーを食べたり、薬膳のスープを飲んだりしている。
定期的に、脈を診てもらっている人もいる。

体が凝り固まって、もうどうにもならなくなるまで放っておかないで、足つぼマッサージや全身マッサージの店を、ごく日常的に気軽に利用する。そのぶん店舗の数も多くなる。看板をひんぱんに見かける要因のひとつだろう。


「トン!」「ホァトン!!」
この2つの言葉は、私が足つぼマッサージを受けるときのために覚えた広東(カントン)語だ。
話せるのは広東語のみというマッサージ師に何度かめぐりあったので、「トン(痛い)!」と「ホァトン(ものすごく痛い)!!」を教えてもらい、(痛いから、もうすこしやさしく揉んでほしい)という気持ちを伝えている。

ところが先日、「トン!」と叫ぶほどの痛みではないのだが、すこしだけ痛くて眉をゆがませたときのこと。突然、マッサージ中の男性が顔をあげて、「イタキモチイイ?」と話しかけてきた。
初めは、広東語なのだろうと思ったので、分からないという表情で応対したのだが、もう一度、「イタキモチイイ?」とたずねられて、ようやく、それが日本語の「痛気持ちいい?」であることに気がついた。

(ちょっと痛いけれど、気持ちいいの。痛いのはガマンするから、そこのマッサージをもっと続けて)というニュアンスを出すのに便利な表現。そのあとは、「トン!」「ホァトン!!」に、「イタキモチイイ」も加わって、「トン!トン!イタキモチイイ!トン!トン!ホァトン!!」の大合唱であった。

ほかに知っている日本語はない様子なので、日本人観光客がマッサージを受けながらつぶやくのを聞いて覚えたのかもしれない。
きっと、ほかの地域やさまざまな国の独特な言いまわしもマスターして接客しているのだろう。さすが、観光都市・香港だと感心しました。

サインをお願いして分かったミッキーマウスの気くばり
2012.04.16
その他

サインをお願いして分かったミッキーマウスの気くばり


香港ディズニーランドの年間パスポートを持っているという女性に出会った。
「たった2回で、モトが取れるのもあるのよ! 私のは、5回でトントンなんだけど」
偶然、ホテルのロビーで言葉をかわしたときは、その日でもう今年のモトを取ったということで、弾むような話し方をしていた。
その彼女から見せてもらったのが、ディズニー・キャラクターのサイン帳! そもそも、旅先で持ち歩くのには重すぎる分厚いアルバムを小脇に抱えていたのだが、それを落としたことが、声を掛けるキッカケになった。

見開きの右のページに、ミッキーマウスやミニーマウスのサインが入っていて、左側には、そのキャラクターと彼女や彼女の家族との記念写真が飾られている。
ディズニー・キャラクターが、それぞれのサインを持っていることが初耳だった私は、矢継ぎ早に質問する。
「どこで、サインしてもらえるの?」
「記念撮影できるポイントで写真を撮ったあとにお願いするの。でも、行列が長いときは遠慮するわ」
「だれでも、自分のサインを持っているの?」
「私はもう、ほとんどのキャラクターのを集めたわ」
「ペンは?」
「短くて小さいのは失礼よ。できるだけ細長いものを用意しほうがいいわね」

今年の春、本当にディズニー・キャラクターにサインがあるのかどうか、自分自身で確かめてみる機会がめぐってきた。

「キャラクターズ・ブレックファースト」! 
香港ディズニーランドホテルのなかにあるビュッフェ形式のレストランで食事をしていると、ミッキーマウスやミニーマウスがあらわれて、それぞれのテーブルをまわって挨拶をする。
そのときに色紙を持っていると、かならずサインをもらえると聞いたのだ。

日本ではバイキングというが、みなさんは、ビュッフェ形式のレストランで、どんな食べ方をしますか?

端から端まで歩いて、まず、全体像を把握するのが、食いしん坊オマタのいつものルール。
おなかがいっぱいになってから、その店の名物を知って、食べたいけれど食べられないと悔やみたくない。
脳みそが満腹信号を発したあとに、評判のいい料理の行列を見つけて後悔したくないのだ。

おそらく、そのときの私も、メニューの吟味に夢中になりすぎていて、ひとり目が近づいたときに気がつかなかったのではないかと思う。
さらに、ふたり目のときも! 
私の背後からの光がさえぎられて、料理のプレートが暗くて見えにくくなったので振り返ってみると、そこには、コック姿のグーフィーとプルート、そして、上品な笑顔のミッキーマウスのそろい踏み! 
申し訳ないことに、手を振っても、顔をのぞき込んでも、まったく気配を感じないドンカンな私のところで、“キャラクター渋滞”を引き起こしてしまったようだ。

「あの、あの、May I have your autograph?」

キャラクターたちも焦(あせ)っていたが、私もかなりの大慌て! 折れたり汚れたりしないように、スーツケースの平らなところにしまって日本から運しんできた色紙をムダにはできない。
息せき切ってテーブルに戻る。
バッグから色紙を出す。
細長い油性ペンも出す。
ペンはキャップをはずして、握りやすいように手渡す準備をする。


実はこのとき、ミッキーマウスがくり返す手ぶり身ぶりが何のことなのか分からず、私は人知れず焦っていた。

彼は、色紙のうえに手をひろげて、大きな円と小さな円を描いては、私のほうに顔を向けて首をかしげる。
(なんだろう?)
ふたたび、大きな円と小さな円を描いて、首をかしげる。
(何か質問してるのね)
3回くり返されて、ようやく理解した。

大きな円が、「ひとりで、色紙全体を使っていいの?」。
小さい円は、「ほかのキャラクターとの寄せ書きにするの? そうしたら、ボクは小さめのサインにするよ」。

キャラクター全員の分の色紙を持っていることを見せて、大きなサインをお願いしたが、あのときのミッキーマウスの細やかな気くばりには、心の底から感激した。
仲間への思いやりにもあふれていて、さすが!世界のスパースターは素晴らしい!!

日本から人気に火がついた「Duffy(ダッフィー)」
2012.04.02
その他

日本から人気に火がついた「Duffy(ダッフィー)」


「Duffy(ダッフィー)」を身につけて歩く人が増えている。
携帯電話やバッグにストラップタイプのものをつけたり、手と足がマグネットのぬいぐるみでバッグのショルダーをはさんだり、ポーチやコインケースを肩からさげたりと、歩くたびに揺れて目立つものがあったら、やっぱりダッフィーということが多い。
ふたつ揺れているなぁ〜と思って目をこらと、ダッフィーのガールフレンドの「Shellie May(シェリー・メイ)」と一緒だということもある。

日本のディズニー・シーから人気に火がついたダッフィーが、香港のディズニーランドでも愛され始めている。
でも、実はまだ、シェリー・メイが香港には到着していないのだ。

「どなたかが、日本からシェリー・メイを連れてきて、香港のダッフィーとお見合いさせてくれないかと願っているところなんです」

香港ディズニーランドの関係者からは、なんともファンタスティックなお答えが返ってきたので、さっそく香港ディズニーランド・ホテルの庭にダッフィーを連れ出して、お見合い写真を撮影! すこし背伸びして足を組んだ1枚が私のお気に入りだが、シェリー・メイの心に響くでしょうか?

“食”の国・香港では、ディズニー・キャラクターの活躍する場所は、パーク内のアトラクションやパレードや記念撮影スポット、それに、ぬいぐるみやクッキーの缶の絵になってのショップだけではない。
それぞれのレストランのテーブルの上でも大活躍なのだ。


ミッキーマウスのシルエットをかたどったワッフルやプリンやフルーツなら、ほかの国にもありそうだが、香港でしかお目にかかれないのが、飲茶(やむちゃ)の点心である。
湯気のあがる蒸籠(せいろ)のフタを開けると、そこからは、リトル・グリーン・メンやチキン・リトルや3匹の子豚! そして、ダッフィーがあらわれる。

初めの30秒は、口々に感想を言いあって大騒ぎである。
「かわいい!」
「とても食べられないわ」
「私も! いま、目が合ったし」
つぎの30秒は、黙ってカメラのファインダーをのぞきつづける。
そして、そのあとの30秒は、言い訳をしながらの完食である。
「温かいうちに食べないと申し訳ないわよね」
「そう…食べ物だから」
「うしろから噛みついたらどうかしら?」
「あー、マサコさん! 2つに割ってる」
「3匹の子豚の中身は、バーベキュー味のポークよ!!」
「おいしい! あーザンコク! でも、おいしいわ」
ほどなくして、蓮の実あんのチキン・リトルまんじゅうも、小豆あんのダッフィーまんじゅうも、すべて私たちのお腹のなかにおさまってしまった。

いまの香港では、2ピースのダッフィーでひとつというメニューだが、このつぎ遊びに行くころには、シェリー・メイとペアを組んで、ひとつの蒸籠のなかにおさまっているかもしれない。
食いしん坊の私は、きっとこれからも、飲茶にひかれて香港ディズニーランドめぐりをすることでしょう! あなたも、いかがですか?

バレンタイン・デーの夜に、花束をかかえてプロポーズ
2012.03.21
尖沙咀

バレンタイン・デーの夜に、花束をかかえてプロポーズ


2月14日に香港で撮った写真を整理していると、「St. Valentine's Day」と英語で書かれたポスターや看板が数多くフレームインしていて、あらためて、レストランやブティックの店頭がにぎやかに飾りつけられていたことを思い出す。
「情人節 St. Valentine's Day」と、広東語と英語が併記されていたものも目立っている。

「情人」という漢字が目に飛び込んでくると、とても艶(なまめ)かしい、そして、内緒にしておきたいような男と女の間柄を想像してしまうのだが、それは「情婦」! 「情人」は、「LOVER」である。

さらに、この「情人節」は、若者たち、とりわけ、独身の男女のあいだだけでくり広げられるイベントではないことにも驚いた。
すでに結婚している男性も、奥さまへの花の贈り物を用意。白髪のおじいちゃんも、おばあちゃんにプレゼントする花束をもとめるために、街のお花屋さんやスーパーマーケットの生花売り場に足を運ぶという。

70年80年というヴィンテージものの深いシワを刻んだ顔のおじいちゃんが、赤やピンクや紫のラブリーな花束をかかえて家路を急ぐ姿を撮影できないものかと、かなり長い時間、夕暮れの香港を散歩してみたが、残念なことに、ご高齢&花の組み合わせにはめぐり会えなかった。

そのかわり、若いカップルには数多くすれ違った。
花束をかかえた男性と腕と腕をグルグルからませ、レストランに入っていく女性の笑顔。ルイ・ヴィトンやティファニーといったブティックも入場制限をするほどの盛況ぶりで、その行列のなかにも、ピッタリ体を寄せあった若いカップルが! 男性の空いているほうの腕には花束が、そして、女性の顔には微笑みが広がっている。

地下鉄のホームや、バス停の行列のなかには、あきらかに職場に届いた大きくてズッシリ手応えのありそうな花束を持ち帰るOLさんの姿を見つけることができる。
「May I take your picture ?」のお願いにもニッコリ! カメラ目線で応えくれる。

地下鉄の尖沙咀(チムサーチョイ)駅から地上に出るエスカレーターの前で、ピンクのハート8枚で足元にハートを描き、花束をかかえて立っている男性に出会ったのも、その散歩のさなかだった。
これから、プロポーズをすると言うので、カメラを構えて待つこと10数分! 期待に胸がふくらんだのだが、ついに、そのシーンをおさえることはできなかった。

プロポーズのウワサは、あっという間に広がって通行人の足を止める。またたくまに、4重5重の人垣(ひとがき)がコの字型にできあがる。
上りのエスカレーターをおりて、彼の待つところまでが、さながらファッション・ショーのランウェイのような細長い舞台と化(か)してしまったのだ。
ヒューヒューと場を盛り上げる口笛! 大きな歓声をあげる人もいる。
そして、多くの人がカメラを構えている。さらに多くの人が、スマートフォンをカメラ機能に切り換えて、高くかかげている。

主役の登場を、いまや遅しと待ち構えて、これ以上はないというくらいに盛りあがった空気に、ここで、水をさした人物がいる。
警備員だ。
お役目なのでしかたないのだろうが、体格のいい警備員が何人か登場して、大声で注意して歩く。両手をひろげて、人垣をバラバラにして歩く。
ふと気がつくと、プロポーズをしようとしていた男性が、足元に置いたピンクのハートを拾い集め、街の雑踏のなかに姿を消すところだった。

どこかに場所を変えて、プロポーズすることができたかしら?
それとも、違うプランに切り換えて、プロポーズしたかしら?
彼に、幸あれと願いつづける毎日です。