
スマイルマーク、スマイルフェイス、ニコニコマーク、ニコちゃんなど呼び方はさまざまだが、あの黄色い丸顔に、目と口角のあがったクチビルのマークをあしらったものを部屋に飾ったり、バッグや携帯電話につけたりしている人は多い。
50歳前後の人たちが少女のころに親しんだものだが、また数年前に人気に火がついたので、母と娘で数多くのグッズを共有している家もあるほどだ。
それぞれの好みもハッキリとあらわれ、目に痛いような蛍光色の黄色ではなく、すこし山吹色っぽい顔色がいいと言う人もいる。
目のカタチも、縦長でなくちゃダメ!と言い張る人もいる。
「キュッとあがった両方のクチの端に、エクボのような縦線がないとイヤ!」
こう言って、自分のコレクションを並べてみせるのは、私の家族のひとり。クッション、膝掛け、椅子の背もたれ! マグカップに、冷蔵庫のマグネット。バスルームをのぞけば、タオルにもバスマットにも、あがった口角に縦棒のはいっているニコちゃんマークがひしめきあっている。
香港で私が撮ってきたニコちゃんの写真も、我が家ではカワイイと人気を集めているが、それもひとえにクチビルのはしっこの縦ラインゆえだ。
電車のなかの優先席。ホームと車両のあいだにできる段差やすき間に気をつけるように注意をうながすポスター。それから、エスカレーターのステップの端に乗らないように呼びかける立て看板。どれにも、ニコちゃんマークが採用され、どのニコちゃんにも、両方のクチの端に縦棒が描かれている。
赤、黄色、緑と、エスカレーターに乗っている3人の靴の甲にも、クチビル+短いながらも縦に線のはいった笑顔が並んでいる。
しかしここにきて、その縦ラインがはいっていなくても、ニコちゃん好きに大歓迎されているニコちゃん関連のおみやげがある。理由は、おいしいクッキーだから! 店の名前は、「曲奇四重奏 Cookies Quartet (クッキーズ・カルテット)」。オーナーが元ミス香港というのも、クッキーに輝きを添えている。
銅鑼灣(コーズウェイベイ)の「Cookies Quartet」は、「CRUMBS(クラムズ)」にフローズンヨーグルトを食べにいったときに見つけていた。順番待ちの行列のあいまに、その右隣りのショーウィンドウに飾られたギフト缶に目を奪われていたのだ。
ヘーゼルナッツ+ペッパーの大人っぽい味、濃厚なチョコレート味やタマゴ味、ナッツ類もふんだんに使われたクッキーなどがぎっしり詰まったギフト缶の真ん中に、ぺろっと舌を出したニコちゃんが4枚。おいしいものに、おいしくてかわいいものが囲まれている。
クリスマスや誕生日の贈り物に使うという香港の友人たちのすすめもあり、「Jenny Bakery(ジェニー・ベーカリー)」一辺倒だったおみやげにニューフェイスが加わったわけだ。
そして、それと同時に、ニコちゃんマークに著作権がないという知識も加わった。
「気軽に使ってほしいから、特許を申請しなかったって聞いたことがあるわ」
一番初めに誰が考えついたかについては諸説あるようだが、いずれにしても、ちょっと目にはいるだけで楽しい気分になる“ニコちゃん"には、究極のシンプルさのなかに、たっぷりの愛嬌が含まれていると感心しています。