
「天下第一包」を両手で持ち上げ、ツヤツヤした頭の部分からガブッと半分ほどかぶりつき、モグモグしながらビクトリア・ハーバーを眺め、さらに、その向こうの香港島を180度見渡すと、(香港に戻ってこられて幸せぇ〜♪)と満面の笑みがこぼれる。
香港の街を眺める「天下第一包」
香港にいるあいだは、昼間の飲茶(やむちゃ)めぐりも楽しみのひとつになっているが、到着して一番初めに予約するのが「王子飯店(Prince Restaurant)」! できれば、窓際の席だ。
レストランの栄枯盛衰が激しい香港では、しばらく行かないうちにクローズしてしまったり評判が落ちてしまったりする店があるが、「王子飯店」は、2004年の開店時から通いつづけて、毎回!毎回!大満足!! 香港の友人たちのあいだでも、評判は高く安定している。
露筍鮮蝦餃 (プリップリッの海老シュウマイ)
天下第一包 (チャーシュー饅頭)
飄香荷葉飯 (蓮の葉に包まれたチャーハン)
黄金流沙包 (濃厚なエッグカスタードのおまんじゅう)
楊枝甘露 (マンゴー、ポメロ、タピオカの入った冷たいデザート)
これが、かならず注文する飲茶のスタートメニューだ。
途中で、おなかと相談しながら、腸粉(米粉の皮で海老などを巻いて蒸したもの)や豉汁蒸鳳爪(甘辛く味つけされた鶏の足先)を追加してみることもある。
緑のものが欲しくなったら、芥蘭(ガイラン)という日本では見かけない野菜を注文する。
どうしてチャーシュー饅頭に、「天下第一包」いう名前をつけているのか?
おそらく、一番初めに浮かんだであろう疑問だが、あまりのおいしさに感激! (チャーシュー饅頭の頂点に輝いているということね)という納得してしまったから、その謎解きは遠くへと吹き飛ばされてしまった。
それより、早くおかわりを頼むことと、次回からもかならず注文できるように「天下第一包」を暗記するほうに、すべての神経がそそがれていた。
あらためて、「天下第一包」のどこにも、チャーシューが入っていることが案内されていないことを香港の友人たちに聞いてみた。
「食べ物に、縁起のいい名前をつけたり、キレイな名前をつけたりする習慣があるの」
「天下第一包」は、世の中で一番おいしい包(まんじゅう)という誇らしげなネーミングになっていて、レストランの自信のほどがうかがえる。
縁起のいい名前は、ほかにも発見できる。
「春風得意腸」!
春風得意というのは、なんでも上手くいくという意味のことわざを名前にした腸粉(チョンファン)。なかには、色とりどりの野菜が詰められている。
キレイな名前も、見つけることができる。
「飄香荷葉飯」!
飄香は、良い香りがただよっているという二文字だ。そこに、蓮の葉っぱをあらわす荷葉と、ごはんの飯をつなげてメニューの説明をしている。
「黄金流沙包」の黄金も、タマゴの黄身をさしているが、キレイな表現を目指している。
ほかにも、野菜「翡翠」、かぼちゃ「金瓜」、パパイヤ「萬寿果」などのドレスアップしたネーミングを、メニューのそこかしこに見つけることができる。
そろそろ、飲茶をするたびに、息せき切って注文し、すぐにお腹がはち切れそうになることから卒業しようと反省した。
このつぎは、好みのお茶を味わいながら、メニューの文字に込められたレストランの思いを感じとる。そのくらい余裕のある観光客になってみたいものです。