ブログピックアップ

始発から終点まで、トラムに乗ってみました。
2012.01.27
その他の香港島

始発から終点まで、トラムに乗ってみました。


前回の「香港バスの会」の食事会から数日ののち、私は2枚の写真をたずさえて会長の小柳淳さんのもとを訪問していました。
実は1度だけ、トラム(路面電車)全線を制覇したことがあって、そのことをコラムに書きたいのだが、どの写真を見ても、どの位置から撮ったものなのか見当もつかない。
そこでひらめいたのが、あの映像クイズ大会のこと。背景に写り込んでいる建物を見てもらえば、撮影ポイントはもちろんのこと、どの方向にトラムが進行中なのかも判明するに違いない。おまけに、「香港路面電車の旅」という本も出していらっしゃるので“トラム博士”に違いないと思い、初対面から日も浅いのに図々しくおたずねしたのだ。

お茶の子サイサイとは、まさに、こういうことを言うのだろうと、会って数秒後に確信した。
「左に見える建物が、以前の立法會大樓(旧国会議事堂)。中環(セントラル)ですね」
「もう1枚は、海景樓がバックに写っているから鰂魚涌(クオーリーベイ)です。太古から鰂魚涌に向かう途中で撮ったのではないですか?」
テーブルの上に私がひろげた路線図の2ヶ所を、迷うことなく指さした小柳会長は、さらに言葉を続ける。
「トラムのバックに、とても香港らしい、形に特徴のあるビルが入っていて、いい写真ですねぇ」
写真をほめられると思っていなかった私は、目を丸くして正直に反応する。
「どのビルですか?」
シャッターを切るときは、すれ違う車両との距離にばかり気を取られて2階の最前列から身を乗り出しているので、空が抜けるように青かったことにも、あとから気づくほど背景に注意を払っていなかったのだ。

正面の右側に建つ通称「コアラビル」。何頭ものコアラがビルの壁面に抱きついているように見えませんか?

壁が湾曲して建てられている「海景樓」。ただただ四角いビルより風情がありますね。


私のカメラに、偶然おさめられていた2つの建物を紹介します。
まずひとつめが、コアラビル! 真っ赤なトラムの向こうにそびえ建っている3本のビルの一番右です。「LIPPO CENTRE(リッポーセンター)」というツインタワーなのだが、確かに目をこらすと、何頭ものコアラが壁面に抱きついているように見える。
もう1枚には、「海景樓」という住居棟。ビル全体が緩(ゆる)やかに弧を描いている。レパルスベイの胴体に穴の空いた風水マンションもそうだが、大きく波打つようなデザインの建物には、コンクリートの硬さを忘れさせてくれるような効果がある。
個性的な形をした高層ビルが林立する香港だから、今度は、それを眺めるためにトラムに乗ってみるのもいいかもしれないと予定表に書き込んだ。

どちらが始発で、どちらが終点なのかは定かではないが、堅尼地城(ケネディタウン)と筲箕湾(サウゲイワン)のあいだを、このまえの私は、片道1時間40分くらいでゴールインした。
トラムの路線は全部で6つあり、途中から行き先を変えて、跑馬地(ハッピーバレー)のほうにまわり込むものもあれば、北角(ノースポイント)で折り返すものもある。ふらっと降りた停留所で待っていれば、次から次へと到着地の異なるトラムがやってくるので、「ぶらり途中下車の旅」の今週の旅人になったような気分だった。

そして、道の両側に立ち並ぶ店舗の1軒1軒を確認しながら進めるほどのスピードだから、(あっ、羅富記粥麵専家! ピータンのはいったお粥を食べたくなっちゃったぁ〜)と食欲をかきたてられる看板を発見したら、次の停留所で降りればいい。停留所と停留所のあいだは250メートルくらいしかないので、食いしん坊の胃をほどなく満たすことができる。

やがて、地下鉄では行けない上環(ションワン)より西に向かうと、値段の高そうな乾物の匂いが鼻の奥に流れ込んでくる。どの店にもどの店にも、干したフカヒレやアワビやツバメの巣が高く積みあげられている。
そこで働く人たちの活気、店頭で交わされる大声でのおしゃべり、香港の街の様子に直接ふれながらトラムの振動に身をまかせていると、これが、とても分かりやすい香港島半日観光になるのではないかとおすすめしたい気分になりました。