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星3つでも、お財布が風邪をひかない香港
2011.12.26
尖沙咀

星3つでも、お財布が風邪をひかない香港


高額なものをすすめられて断るときなどに、「ノドから手が出るほど欲しいんだけど、いまね、私のお財布が風邪をひいててダメなの」と言いながら、悲しそうな表情を浮かべている人を見かけてから、ときどき、この表現を気に入って拝借している。

このまえ、香港島の坂道散歩の途中に、しばしば立ち寄る陶器の店でも、おすすめ上手の店員さん相手に使ってみた。そこは、数年前に、サイズ的にも金額の面でも、大きな買い物をしたところなのです。

「ものすごく欲しくなってきたから、もうすすめないで! このまえの買い物をしてから、私のお財布はず〜〜〜っと風邪をひいていて、まだ治っていないから」
この言いまわしに、相手は大笑い! 「あれから、ず〜〜〜っと?」と身を乗り出してくる。
「そうよ、お財布のなかにブルブル悪寒(おかん)が走っているの」
たいがいは、このあたりで話は終わるのだが、香港の接客上手は、もうひと押ししてきた。

「電子レンジで温めたらいいかも! 30秒くらいでお財布の風邪が治って、これを買ってもだいじょうぶになるよ」
ふだんは、ああ言えばこう言う私だが、この提案には、ただただ大笑い! 店内に電子レンジがないことが幸いしたが、もし設置されていたら、この直後に私のお財布からは、湯気とお金が出ていたかもしれない。

さらに、お財布が風邪をひきそうな気配が、その直後に電話に乗ってやってきた。
「オマタさん、とても運のいいことに『新同樂』の予約が取れたの! 今夜は、ミシュランの3つ星レストランよ!!」
香港の友人の声が弾んでいる。夕ごはんの席に集まってから知ったのだが、いままで予約に成功したことがないので、その日のメンバーは全員が“3つ星レストラン初体験”であった。

香港のミシュランガイドには、300香港ドル以下で食事を楽しめる「BIB GOURMAND(ビブグルマン)」という項目が立てられていて、こちらにエントリーされている「蓮香樓」や「翡翠拉麺小籠包」は、地図がなくてもたどり着けるほどお馴染みなのだが、やはり3つ星ともなると、お会計のさいに衝撃を受けるのではないかと思い込んで、積極的には足を向けていなかった。

しかし、本当においしいうえに、納得のプライスでないと客足が遠のく香港! メニューブックを開いた瞬間に、お財布が何日も寝込むほどの重い風邪をひく心配のないことが分かった。

百花脆皮乳豬件

格蘭焗釀响螺

一瞬、にぎり寿司が8つ並んでいるようにも見える「百花脆皮乳豬件」が、198香港ドル。
これは、ネタの部分がローストポーク。シャリのところが海老のすり身。
食べてしまうのがもったいないようなアートの雰囲気をかもしだしているが、記念写真を撮ったあとの奪いあいは熾烈(しれつ)をきわめた。

ひとりにひとつのホラ貝のグラタンが運ばれてきたときも、歓声! 「格蘭焗釀响螺」は、ホラ貝をポルトガルのソースであえたグラタンで、88香港ドル。極上のリブロースを照り焼きにした「燒汁乾逼牛肋骨」は、お腹を満たす一品で98香港ドル。
このほかにも、野菜の土鍋炒めや透き通ったスープの麺などをいただいたが、いずれも大!大!大満足のおいしさであった。

そして、食事の終盤。そろそろお会計をと伝票に手を伸ばす私に、香港の友人から初めて耳にする表現が飛んでくる。

「今夜は、エーエーにしようね」

文字にすると「AA制」と書くのらしいが、普段の会話の中には「AA(エーエー)」と織り込まれる。
私が「A」、食事の相手が「A」。要は、「ワリカンにしましょう!」という提案なのだ。
アルファベットの形を巧みに取り入れて、新しい言葉を作っていることに感心する。お金のことに直接触れていないので、露骨なイメージもないし、気軽に使えて、申し出を受けたほうも、楽な気分でワリカンに参加できる雰囲気だった。
このあと、私の脳みそは、メタボリックな体型の人ばかりが集まっていたら、「DD」でもいいかも! 私のように顏デカ同士の食事会なら「PP」、それとも、「QQ」のほうが適切だろうか? いろいろな組み合わせを浮かべて、しばし、アルファベット遊びに興じていました。